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介護情報・コラム

【弁護士が解説】電子帳簿保存法(電帳法)対応のシステム化|介護事業者も導入できるアイデアを紹介

2024/03/13

【弁護士が解説】電子帳簿保存法(電帳法)対応のシステム化|介護事業者も導入できるアイデアを紹介

執筆者:阿部 由羅(ゆら総合法律事務所・代表弁護士)


2024年1月より全面施行された電子帳簿保存法(電帳法)の改正法には、介護事業者においても対応が必要となります。

特に、すべての事業者に義務付けられた電子取引データの保存に当たっては、電子帳簿保存法に定められた要件を満たす形で行わなければなりません。
その一方で、データを会計ソフトなどと連携させれば、経理業務等の効率化に繋がります。

介護事業者が改正電子帳簿保存法に沿って事務フローを見直す際には、同法に対応したシステムを導入するのがよいでしょう。
本記事では、介護事業者も導入できる、電子帳簿保存法対応のシステム化のアイデアを紹介します。



介護事業者において必要な電子帳簿保存法対応

2024年1月以降、改正電子帳簿保存法に基づき、電子取引データをデータのまま保存することが完全義務化されました。
したがって、データを印刷して紙で保存することはできません。
同改正は2022年1月からすでに施行されていましたが、未対応の事業者が多いことを踏まえて、2年間の宥恕措置が設けられていました。宥恕措置の終了に伴い、2024年1月から電子取引データ保存が完全義務化されたものです。

介護事業者においても、電子取引データをデータのまま保存する仕組みを整える必要があります。その際、「真実性」と「可視性」の要件を満たさなければなりません。


(a) 真実性
保存したデータが改ざんされない仕組みを整備する必要があります。具体的には、以下のいずれかの措置を講ずることが必要です。
  • タイムスタンプの事前付与
  • 作成後速やかにタイムスタンプを付与し、保存者または監督者の情報を確認できるようにする
  • 訂正および削除の履歴を確認できるようにする、または訂正や削除ができないシステムを利用する
  • 不正な訂正や削除の防止に関する事務処理規程を策定、運用する

(b) 可視性
税務調査等に備えて、データの内容をスムーズに出力して確認できるようにしておく必要があります。原則として、以下の措置をすべて講じなければなりません。
  • 出力機器と操作説明書の備付け
  • 一定の要件を満たす検索機能の確保(前々事業年度における売上高が5,000万円以下の場合は不要)
  • 自作プログラムに関する概要書、開発時に作成した書類、操作説明書の備付け
  • データの備付けおよび保存に関する事務手続きを明らかにした書類(事務処理規程等)の備付け

電子帳簿保存法対応をシステム化するメリット

電子取引データの保存方法について、電子帳簿保存法の要件を満たしているかどうかを手動・目視でチェックするのは大変です。一定のコストはかかりますが、電子帳簿保存法に対応したシステムを導入することが望ましいでしょう。

電子帳簿保存法対応をシステム化することには、主に以下のメリットがあります。


  • 労力の軽減
    →システムを通じて自動的に電子帳簿保存法対応が完了するため、自ら新制度の内容を調べて対応する労力が軽減されます。
  • 対応漏れの防止
    →システムを通じて機械的に電子帳簿保存法上の保存要件を満たすことができ、対応漏れを防げるため、将来的に税務調査を受けた際にも安心です。
  • バックオフィス業務の効率化
    →システムを通じて整然と電子取引データを保存すれば、過去の書類をスムーズに探すことができるため、バックオフィス業務全体の効率化に繋がります。 また後述のように、管理ツールと会計ソフトを連動させれば、経理業務を大幅に効率化することも可能です。

介護事業者も導入できる、電子帳簿保存法対応のシステム化のアイデア

介護事業者が電子帳簿保存法に対応するためのシステムを導入する際のポイントとしては、以下の3点が挙げられます。自社の状況に合わせて適切なツールを選択し、かつIT導入補助金を利用して低コストでのシステム導入を図りましょう。

  • 電子帳簿保存法に対応した管理ツールの導入
  • 管理ツールと会計ソフトの連携
  • IT導入補助金の利用

電子帳簿保存法に対応した管理ツールの導入

電子帳簿保存法に対応した契約や請求書などの管理ツールを導入すれば、システム上の機能を通じて、自動的に電子帳簿保存法上の保存要件を満たすことができます。
ツールによって機能や費用などが異なるので、自社のニーズと予算に合った管理ツールを選んで導入しましょう。


管理ツールと会計ソフトの連携

請求書データについては、管理ツールと会計ソフトを連携させておけば、自動的に仕訳が行われるなど経理業務の効率化に繋がります。 また、2023年10月から施行されたインボイス制度についても、管理ツールと会計ソフトの連携によってスムーズに対応できます*1。

すでに会計ソフトを導入している介護事業者においては、会計ソフトと同じ事業者が提供している管理ツールの導入を検討するとよいでしょう。
会計ソフトが未導入の介護事業者においては、会計ソフトとの連携が可能な管理ツールを導入することをおすすめします。


IT導入補助金の利用

「IT導入補助金」とは、中小企業などがITツールを導入する際に、その費用の一部を国が補助する制度です。

2024年度のIT導入補助金*2には5つの枠が設けられており、インボイス制度に対応した会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフトの導入に関しては「インボイス枠(インボイス対応類型)*3」を利用できます。
インボイスに対応している管理ツールや会計ソフトは、電子帳簿保存法対応にも対応していることが多いです。IT導入補助金のインボイス枠(インボイス対応類型)を活用すれば、両制度への対応を低コストで済ませることができます。

IT導入補助金を利用する際には、事務局に対して交付申請を行う必要があります。交付申請の際には、公募要領に沿って申請書などを作成しなければなりません。
交付決定が行われた後、実際にITツールを導入してから事業実績報告を行うと、IT導入補助金が交付されます。補助金の交付後は、事務局に対する事業実施効果報告を行います。

IT導入補助金の申請手続きの詳細は、IT導入補助金の特設サイトをご参照ください*4。


まとめ

介護事業者が電子帳簿保存法に対応するためには、同法に対応している管理ツールを導入するのがスムーズです。会計ソフトと連携できる管理ツールを導入すれば、経理業務を含めたバックオフィス全体の効率化に繋がります。 管理ツールや会計ソフトの導入時にはIT導入補助金を利用できる場合がありますので、公募要領を確認した上で申請を行い、低コストでのシステム導入を目指しましょう。



*1)介護事業者におけるインボイス制度への対応については、以下の記事をご参照ください。
参考)日本ケアコミュニケーションズ「介護事業所が知っておくべきインボイス制度の手続き|対応のポイントを弁護士が解説」
https://www.care-com.co.jp/usefulinfo/seido_04/

*2)IT導入補助金2024は、2024年2月16日以降に申請受付が開始されます。
参考)IT導入補助金2024特設サイト
https://it-shien.smrj.go.jp/



*3)参考)IT導入補助金2024特設サイト「インボイス枠(インボイス対応類型)」
https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/digitalbase/



*4)参考)IT導入補助金2024特設サイト「新規申請・手続きフロー(中小企業・小規模事業者等のみなさまの手続き)」
https://it-shien.smrj.go.jp/applicant/flow/



【執筆者】
阿部 由羅
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。
注力分野はベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続など。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。
各種webメディアにおける法律関連記事の執筆・監修も多数手がけている。
https://abeyura.com/
https://twitter.com/abeyuralaw
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