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介護情報・コラム

他の専門職と良好なコミュニケーションを!多職種連携のコツについて看護師が解説

2023/07/12

他の専門職と良好なコミュニケーションを!多職種連携のコツについて看護師が解説

執筆者:浅野すずか(元看護士)


一人の利用者には、ケアマネジャーや訪問介護、訪問診療など、さまざまな専門職が関わっています。
ひとつの分野で、利用者への支援を全て行うことは難しいものです。
医療や介護の各分野の専門性を高め、利用者に適切な支援を提供するためには、多職種との連携が欠かせません。

しかし、多職種だからこそのコミュニケーションの難しさがあり「多職種と連携することの大切さは分かるけれど、どう進めたらいいのか分からない」という方も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、筆者の体験談をもとにどのようにしたら多職種とのコミュニケーションがスムーズにいくのか解説します。



なぜ多職種とのコミュニケーションは難しいのか

「多職種との連携は必要」だと多くの人は感じているのに、実際に難しいのはなぜでしょうか。


(1) 忙しく、時間がない

どの職種にも言えることだと思いますが、目の前の業務で忙しく、時間がないことが挙げられます。

同じ会社内に所属している多職種(例えば、居宅介護支援事業所と訪問介護が同じ事業所内にあるなど)であれば、物理的に距離も近くなるのでコミュニケーションがとりやすいでしょう。
しかし一般的に、多職種とコミュニケーションをとろうとすると、相手方に訪問したり電話をかけるなどアクションが必要になります。
また、多職種連携は必須の業務ではないので、他の業務に比べて優先度が低くなりやすいという特徴があります。そのため、忙しいと優先順位が低くなってしまいます。


(2) 職種によって知識が違う

職種によって専門性が違うので、それぞれもっている知識も異なります。
違う職種の人に対して「これくらい知っていて当たり前」という態度で接してしまうと、コミュニケーションが難しくなります。
そして、知識が違うことで見えていることや課題に感じることも違います。この部分を共通認識としてもっておかないと、協力体制を築くのは厳しいでしょう。


(3) 無意識に職種に対するランク(上下関係)を意識してしまう

何となく「医師が言うことには従わないといけない」「ケアマネに話しかけづらい」など、職種によって判断してしまうことはありませんか?
筆者は看護師ですが、以前介護福祉士から「看護師は厳しいイメージがあって、近寄りがたい雰囲気がある」と言われたことがあります。
本来であれば職業による上下関係はないのですが、その人の人となりが分かるまでは職業に対するイメージによって関わりづらさを感じることもあります。


多職種連携の重要性

ここで改めて、多職種連携の重要性をおさえておきましょう。主なポイントは2つです。

(1) さまざまな視点から見ることによって、より安全性や正確性が高まる

前章で、職業によって知識が違うことをお話しました。知識が違うということは、あらゆる方向性から利用者やその問題点について見られていない可能性があるということです。

例えば、医師は体の異常や症状について診断を行いますが、実際の生活面については訪問介護の方がよく知っているということが多くあります。
利用者の生活をよく知らずに治療やアドバイスをしたとしても、生活状況を知らなければ的外れなものになってしまいます。


(2) 専門職が協力することで、利用者が目標とする生活に近づきやすくなる

利用者が抱えている課題は、その人によってさまざま要素を含んでいますし、時間の経過とともに変わっていくこともよくあります。
そういったことに対して、ひとつの職種だけ関わっても、スムーズに解決できる可能性は少ないでしょう。
職種によって役割やできることが違うことを認識し、利用者がよりよい状態に近づくためにはどうすればいいのか、チームとして考えることが大切です。


実際の多職種連携とは?筆者の事例をもとに解説

筆者は看護師として病棟で勤務後、訪問入浴介護に転職しました。
病院での多職種連携は、主に同じ病院内で働く多職種がほとんどだったので、同じ組織ということもありそれほど意識したことがありませんでした。
しかし、介護業界は違います。別の会社が運営している事業所の方がほとんどだったので、一から信頼関係を築いていく必要があります。

転職した当初は、私も苦労しました。
まず、相手がどんな人なのか分かりません。パッと見た感じでは、忙しそうだったり何となく怖そうに見えたりして、話しかけるのさえもためらうことがありました。
上司から「○○さんは優しい人だよ」と聞くことがありましたが、やはり実際に自分が得た情報ではないので、なかなか積極的に関わる勇気がもてませんでした。

私ができることとして、病院から在宅へ移行するときや介護認定が更新されるときのカンファレンスに積極的に参加しました。
参加者の多くは管理者なので、利用者が違っても同じサービス事業所であれば管理者は同じです。
そこで、顔と名前を覚えたり、こちらも名刺を渡して挨拶をすることで、少しずつコミュニケーションをとっていきました。

通常の業務では、利用者に何か変化があったときは、ケアマネジャーや訪問看護などに情報を共有するように心がけました。
電話をすることもありましたが、それほど緊急でないときには利用者の自宅に置いておくノートを活用することが多かったものです。
そのノートには、訪問看護や訪問介護などサービスが行われたときに記載するもので、他のサービス事業者も記載してくれました。
そのノートには、「いつもありがとうございます」「今日は入浴の日なので、楽しみにしていましたよ」「お手数ですが、これをしてもらえたら助かります」のような、相手を気遣うコメントもありました。
ただの業務連絡だけではなく、体温を感じる一言があるとこちらも嬉しくなります。
その経験から、私も意識して書くようになりました。

他には、地域で開催される勉強会にも参加しました。
そういう場で会う方が、業務を離れているからかリラックスして話すことができましたし、「同じものを学び目指す仲間」として信頼関係が築きやすくなったように感じました。


多職種と信頼関係を築くためのコミュニケーションのコツ

筆者の経験から、多職種と信頼関係を築くためにはどうすればいいのか、4つのポイントにまとめました。


(1) 顔を合わせる機会をつくる

オンライン化が進み、テキストでのコミュニケーションもスムーズに行えるようになった昨今ですが、やはり直接会って話すのと比べると印象が違います。伝える内容そのものは同じでも、相手の雰囲気や表情など「言葉」以外のものからも人はたくさん情報を得ているのです。
前章では、私がカンファレンスに積極的に参加して顔を合わせる機会を作ったことを紹介しました。
その他、毎月の提供実績や資料を送るのではなく利用者宅を訪問する際に少し立ち寄って届けるなどもできます。
無理のない程度に機会を作ってみてください。


(2) 利用者の目標を共有する

病院や施設、在宅介護など、あらゆる場面で「利用者がどういう状態になることを目指すか」といった目標(ゴール)が設定されます。
例えば「転倒を予防し、安全に歩行できる」「生活リズムを整え、メリハリのある毎日を過ごす」など、目標は利用者さんによって異なります。
この目標を共有し認識を統一することで、チームとして同じ方向に向かって支援を進めることができます。


(3) 自分たちにできること・できないことを明確にする

それぞれの専門職の業務は、きっちり線が引かれているわけではなく、重なる部分もたくさんあります。
例えば、介護福祉士やホームヘルパー、看護師は、利用者の身体介助ができます。チームの一員として、自分たちがどんな役割があるのか、この利用者にはどんな支援が必要なのか考えることが大切です。

そして同じくらい大切なことは、できないことも明確にすることです。人間の生活は複雑で、課題も多様化しています。
おそらく看護や介護職に就く方は「人の役に立ちたい」という思いが強い方たちでしょう。その思いはもちろん素晴らしいのですが、思いが強すぎて自分の業務範囲外のことまで「できます」と言ってしまうと、後に大きな問題に発展することもあります。
できないことがあって当然で、そのためのチームです。できないことは別の事業者に担当してもらうか、代替案を検討しましょう。


他職種に対する理解を深める

自分たち以外のサービスがどういう役割なのか、知識を増やすことで相手への理解を深めることができますし、困ったときに頼りやすくなります。
業務内容を全て把握するという意味ではなく、大まかにチームの中でどういった役割なのかを把握することでコミュニケーションがとりやすくなるので、意識していきましょう。


【まとめ】

多職種とのコミュニケーションは難しさもありますが、それでも少しのきっかけと気遣いでよい方向に進めることができます。
利用者を支援する同じチームの仲間として、まずは自分にできることから試してみてください。



【執筆者】
浅野すずか
フリーライター。看護師として病院や介護の現場で勤務後、子育てをきっかけにライターに転身。看護師の経験を活かし、主に医療や介護の分野において根拠に基づいた記事を執筆。

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