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介護情報・コラム

介護事業の経営コラム8:介護事業所の「組織づくり」① 職員が学び、学べる組織を作ろう!

2022/12/08

介護事業の金融コラム:介護事業所の「組織づくり」1:職員が学び、学べる組織を作ろう!
このシリーズは、高頭 晃紀先生(日本ケアコミュニケーションズ 客員コンサルタント)に、介護事業の経営者としての目線で寄稿いただきました。
第7回は前回に引き続き「ヒトの課題」、高頭先生からのメッセージをお届けします。

 今回は、「学ぶ体制と体系を持った組織」をつくる必要性について考えてみます。

create 採用できた方は「金の卵」

 頭から、失礼を承知で申し上げます。

 例えば東大の野球部のエースや慶應大学のアメリカンフットボール部のクォーターバック、早稲田大学のラグビー部のキャプテンなどが、介護職を希望して、求人に応募してくることは考えにくいことです。
勝手なイメージですが、学業にもスポーツにも秀でていて、リーダーやエースの経験があるような方は、介護の現場職を志望することはあまりないだろうとしか、筆者には思えません。
また、もしそのような人が入社してきたら、組織はきっと持て余してしまうだろうとも思います。
その理由は、単純に介護職の社会的地位や経済的なメリットが不当に低いからです。
もちろん、このことは至急改善されるべき、と考えますが、明日明後日、あるいは来年度に実現するとも思えないのも事実です。

 以上が、筆者の憤りを込めた妄言でした。誠に失礼しました。

 さて、上記を前提にすれば、労働市場でいわゆる「優秀とされる」人材、「高く評価される」人材を介護事業所が獲得するのは困難であり、「優秀とはされない」方々を採用せざるを得ないことになります。
(例外はいつでもありますが)

 もちろん「優秀とされる人」が全員「優秀な人」であるとは限りません。また「優秀とはされない人」の中にも「優秀な人」がいるでしょう。
とはいっても、やはり「優秀とされる人」の方が「優秀な人」である確率の方が高いはずです。ですから、企業は「優秀とされる人」を採用したいわけです。
介護事業だってできれば、「優秀とされる人」を採用したいわけですが、ハードルを下げたとしても、採用自体が相当困難な状況です。

 その困難ななか、採用できた=うちの事業所に来てくれた方は、とても貴重であり、昔で言う「金の卵」であると考えた方が良いはずです。

create 「金の卵」を育てるには、「支援と訓練」が必要

 もちろん比喩で申し上げているのですが、「卵」はそのままでは、動いても働いてもくれません。
大事に大事に温めて温めて、時間が充分過ぎたあと、卵が孵った(かえった)としても、「ひよこ」になるだけです。
「ひよこ」では、一人前の働きができるはずがないのは、よくご存知だと思います。

 端的に言えば、いわゆる「優秀な人」と違い、「優秀でない人」は、一般的に「学ぶこと」が苦手です。むしろ「学ぶこと」に向いていない性質・性格の持ち主と言った方が良いかもしれません。

 ですから、優秀な人よりも、手間をかけ、丁寧に学んでもらう必要があるのです。なぜならば、大半の人が「怠けている」のではなく、努力や学習が苦手なだけだからです。

 私見ですが、現在の介護職は極めて高度の専門性が要求されています。乱暴な言い方をすれば「馬鹿にできる仕事」ではありません。
急いで説明しますが、ここでいう「馬鹿」とは、学業成績が劣っていることを意味しているのではありませんので。

 冒頭に立ち返りますが「優秀とされる人」は、一般的に「要領よく学ぶ力と覚える力」があり、いわゆる「努力できる人」です。
一部の天才的な人を除けば、学業成績が良い人は、そういう人たちのはずです。いわば自分で学べる人です。

 くどくどと書いてきましたが、今、介護職になる人の大半が、「学ぶことが苦手」「努力が苦手」な人だと、改めて認識していただきたいからです。

 筆者は、「最近の職員は勉強しない、努力しない、仕事を覚えない、メモを取らない」という現場のベテランや管理職の嘆きを、もう飽きるほど聞いてきました。
もちろん口には出せませんが、「勉強できたり、努力できたり、仕事覚えが早かったら、ここには勤めないでしょ」と胸の中では思っています。(また暴言を吐いていますね。)
筆者が申し上げたいことは、自らの事業所が採用し、すでに仲間となった人の欠点や未熟さを嘆くよりも、事業所は、組織は、どのような支援をすれば、彼らが輝けるのかを考えた方が建設的だということです。

 前置きが長くなってしまいましたが、理解していただきたいのは、「学ぶ才能」「努力する才能」「メモを取る才能」が少ない人には、「支援と訓練」が必要であり、また「支援と訓練」は、才能の少なさを補って余りあることです。

 単に必要な業務知識を伝えて、「もう覚えたでしょ」というような体制では、早晩、人材は枯渇し、人手は今より窮乏します。
介護事業所では、「能力向上は自己の責任」では、立ち行かないことを、まずはご理解ください。

 前回の終わりに以下の文を書きました。

 「つまり、人材育成、成長、学習の基本的理解とは、介護現場においては、独学での能力向上に期待するのではなく、組織的に学ぶ体制と体系を持つ必要があると理解することです。」

 いかがでしょうか。今回の説明で、上記の理解が深まっていただけたら、筆者は幸せです。

 次回こそ、具体的に、「学ぶ体制と体系を持った組織」をつくるには、どのような方法があるかについて解説いたします。



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講師:高頭 晃紀(日本ケアコミュニケーションズ 客員コンサルタント)
介護福祉経営士。株式会社日本ケアコミュニケーションズ 客員コンサルタント。
1998年より、ケア管理システムをはじめ、介護保険関係のシステム開発を数々手掛ける。
介護施設への経営(介護福祉施設の稼働率向上、在宅サービスの利益向上)・ケア(利用者の健康向上、自立支援)のコンサルティング業務も数多く、講演活動も精力的に行なっている。
社会福祉法人虐待再発防止第三者委員を歴任。
近年は特に介護事業の人材定着、能力向上プロジェクトに注力している
高頭晃紀先生(日本ケアコミュニケーションズ チーフコンサルタント)

著書
『今日から使えるユニットリーダーの教科書』
『100の特養で成功!「日中おむつゼロ」の排せつケア』
『あなたを助ける 介護記録100%活かし方マニュアル ただ書くだけの記録から ケアを高める記録に』(以上メディカ出版)
『介護現場のクレーム・トラブル対応マニュアル』(ぱる出版)
『介護事業経営・運営のノウハウ:これで失敗しない!(共著 同友館)
『3ステップで目指せ一流 ホンモノの介護職になろう: ステップ1 駆け出し編 』
『3ステップで目指せ一流 ホンモノの介護職になろう: ステップ2 本物になろう編 』(339BOOKS: Kindle版)
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